インターネットを使って商品の販売を行うには、ショッピングカート機能が付いているECサイトが必要です。
ECサイトを保有する方法には、大きく分けて、自社ECとモール型ECのふたつがあります。
さらに、自社ECを構築する方法は複数あり、モール型ECにも種類があります。
自社ECサイトとは、独自でサーバーをレンタルし、ドメインを保有して運用するECサイトのことを指します。
対して、複数のショップが出店や出品を行い、ひとつの大きなショップを形成しているサイトのことをモール型ECサイトといいます。
下記の記事では、ECサイトを簡単にわかりやすく説明しています。あわせてご覧ください。
-
参考ECサイトのことが簡単にわかる!種類別メリット・デメリット
続きを見る
本記事では、ECサイトの種類とそれぞれのメリットとデメリットを紹介します。また、ECサイトの選択方法もあわせてお伝えします。
【早見表付き】自社ECサイトとモール型ECサイトの違い
自社ECサイトとモール型ECサイトは、「構築方法」「集客の難易度」「デザインの自由度」「運営費用」「ブランディングしやすさ」などに違いがあります。
2つのECサイトの違いを、早見表にしました。
高度な知識・技術力が必要 | 構築の手間がなく簡単 |
|
立ち上げ当初は難しい | モールの利用客が多いため容易 |
|
自由にカスタムできる | 決まったテンプレートがある |
|
利益は全て自社に入る | モール利用費や販売手数料がかかる |
|
ブランディングしやすい | ブランディングが難しい |
表のとおり、自社ECサイトとモール型ECサイトには、それぞれメリットとデメリットがあります。
以下の章では、さらに詳しく説明します。
自社ECサイトの構築方法
自社ECサイトを構築するときは、どのようなサイトにしたいのかを明確にします。
ECサイトの構築方法は「フルスクラッチ」「ECパッケージ」「オープンソース」「ASP」の4つあります。
企業の規模や拡張性の高さによって導入の難易度が異なるため、下図のポジショニングマップを参考にして自社に適した構築方法を選択しましょう。
以下では、「フルスクラッチ」「ECパッケージ」「オープンソース」「ASP」の、4つの自社ECサイト構築方法を解説します。
フルスクラッチ
フルスクラッチは、システムを一から組んでサイトを作成する方法です。
決まったテンプレートを使用せず、すべてが自社オリジナルなため、見た目のデザインをはじめ、同業他社と差別化が図れるのが特徴です。
また、運用をしていく点においても、自社で取り入れたいカスタム性などの高さがポイントです。
開発後は、自社の基幹システムとリンクするなど、自社独自の運用を展開できます。
フルスクラッチのデメリットは、セキュリティ対策やメンテナンスの問題から、社内に専門の部署が必要になることです。
高い技術力や人的なコストなど、立ち上げにかかる費用は1,000万円以上といわれています。
そのため、フルスクラッチECサイトの立ち上げと運用は、資金や人材が十分に用意できる大企業が向いています。
ECパッケージ
ECパッケージは、自社ECサイトを構築するために必要な決済ツールや在庫管理、売り上げ・受注管理などの機能がパッケージになっており、ECサイトのシステム開発会社が販売しています。
ECパッケージは、パッケージになっていることで、フルスクラッチと比べると自由度が限定されますが、カスタマイズ性が高いことも特徴のひとつです。
料金相場は100万円~で、追加する機能によっては数百万円を超えるケースもあり、バージョンアップする際には別途費用がかかります。
オープンソース
オープンソースとは、無償で一般公開されているソフトウェアを構成しているプログラムを指します。
日本でも有名なオープンソースには、「EC-CUBE」が挙げられます。
自社でサーバーを用意することで、あらかじめ拡張機能が揃わっているオープンソースを活用できます。
WEBサイト制作に関するスキルを持つ技術者が自社にいれば、人件費のみでオリジナル性の高いECサイトを構築できます。
しかし、ほかのシステムと連携を行う場合は、別途費用が必要になります。
注意点としては、無料公開されているオープンソースの大半は、サポートがついておらずセキュリティ対策も自社が行うことになります。
ASP
ECサイトに必要なショッピングカートの機能が使える「ASP」を活用する方法もあります。
ASPとは、アプリケーションサービスプロバイダー(Application Service Provider)を略した用語です。
ASPは、インターネットを経由してソフトウェアやソフトウェア稼働環境を提供する事業者のことを指します。
そのため、ショッピングカートを提供しているアプリケーションサービスプロバイダーは、ショッピングASPと呼ばれます。
ASPカートの多くはWEBサイトを作成する機能も付帯されていることが多いため、サービスを利用することで同時にECサイトを構築できます。
代表的なASPカートには、「Shopify」や「futureshop」などが挙げられます。
サービスの利用には月額費用がかかりますが、保守費用が不要であることも導入の手軽さにつながっています。
デメリットとしては、前述したほかのECサイトシステムと比べて、デザインやシステムなどのカスタマイズの応用が限られている点です。
そのため、手軽に始めたい場合は、まずはASPカートを利用して、販売が軌道に乗り始めてから「ECサイトの制作」を検討するとよいでしょう。
モール型ECサイトの代表例
冒頭の章で述べたように、モール型ECサイトとは、オンライン上にあるショッピングモールを活用する方法で、独自でECサイトを構築せずに商品の販売が行えます。
モール型ECサイトには、『マーケットプレイス型』と『テナント型』の2種類があります。
上記の図のように、Amazonはマーケットプレイス型のECサイトで、楽天市場やYahoo!ショッピングはテナント型ECサイトです。
以下では、代表的なモール型ECサイトである、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングについて、詳しく説明します。
Amazon
アマゾンジャパンが運営するAmazonは、マーケットプレイス型のECサイトです。
マーケットプレイスとは、数ある商品や売り手が販売する商品の中から、買い手が欲しいものを選んで購入できるインターネット上の場所を指します。
そのため、Amazonを売り手として利用する場合は、ECサイトに出店ではなく「自社の商品を出品する形態」になります。
Amazonに出品するメリットとしては、世界規模で認知度があるショッピングモールであることです。
ユーザーに商品を見つけてもらうことができれば、集客力が高くなるのが特徴です。
デメリットとしては、企業独自のデザインではなく、商品ごとに画一されたページが展開されてしまうため、競合他社との差別化が図りにくい点があります。
また、出品するには料金がかかり、「販売する商品ごと」か「毎月一定額」の形態を選択できます。
楽天市場
楽天市場は、テナント型といわれるECモールです。
ECモールの中に各ECサイトが立ち並び、出店する場合はモールの一角に店舗を開設し、商品登録、受注管理、売上集計などの管理業務は各店舗が行います。
楽天市場には、販売計画や広告の打ち方などが相談できるサポート体制もあります。
出店には、プランごとに異なる月額出店料と、システム利用料が必要です。
Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、楽天市場と同様にテナント型のモール型ECサイトです。
リスクなく出店できるように、2013年に出店料や月額費用などを完全無料にしたことで、現在では国内最大級の店舗を保有していると、サイトでうたわれています。
多くの店舗を保有していると同時に、ひとつの商品に対して競合他社が多くなるため、自社のサイトを見つけ出してもらうことが難しくなります。
すると、価格競争に巻き込まれてしまい、商品の値下げを行わなければならない可能性があります。
自社ECサイトを運用するメリット
高額な制作費をかけずに自社でECサイトを運用する選択肢が増えたことから、企業以外にも個人でもECサイトを運用する人が増えています。
下図のように、構築方法は「フルスクラッチ」「オープンソース」「ECパッケージ」「ASP」の4つがあります。
図で紹介している自社でECサイトを運用するメリットを、以下の章で紹介します。
顧客情報からマーケティング戦略ができる
1つ目は、顧客情報が企業側に残るため、独自でマーケティング戦略ができることです。
「モール型ECサイトの代表例」の章で述べたように、ECモールの場合は、顧客情報はモール側にしか残りません。
対して、自社ECサイトの場合は顧客情報が手元に残ります。
顧客情報を利用したリピーター育成のコツには、以下の4つの方法が挙げられます。
- 接触機会を増やす
- リピーター特典を用意する
- 顧客のニーズに合わせた情報を配信する
- 閲覧・購入履歴のある顧客に広告を配信する
たとえば、メルマガ・SNS・カタログなどを使って接触機会を増やします。クーポン配布や会員のランク付けを行いリピーター特典を用意します。
季節のアイテムやおすすめ商品など、顧客のニーズに合わせた情報や、商品を閲覧・購入履歴のある顧客に広告(リターゲティング広告)を配信します。
顧客情報を活用して、リピート客を獲得するための施策や、さらなる販路拡大のための戦略が立てられます。
ブランディングしやすい
2つ目は、ブランディングのしやすさです。
自社でECサイトを準備するため、顧客側・販売側双方に必要な機能を、自由に構築できます。
また、サイトのデザインも自由に行えるため、ペルソナや取り扱う商品のイメージに合わせたオリジナリティーあるサイトが構築できます。
下図は、企業ブランディング成功に至る要素や仕組みを示した図です。
図のように、ECサイトの必要機能やデザインなどの要素が組み合わさり、企業と顧客のイメージが合致することで、ブランディング成功といえます。
利益率が高い
3つ目は、利益率の高さです。
たとえば、モール型ECサイトへの出品や出店は、販売手数料やテナント料などが必要になるため利益率が下がります。
対して、自社ECサイトは、デザインから運用までを自社内で一貫して行います。販売手数料やテナント料は不要です。
売り上げから人件費などの必要経費を除いた分が、そのまま利益として残ります。
自社ECサイトを運用するデメリット
自社ECサイトで商品を販売するには、顧客情報が手元に残るなどの大きなメリットがあります。
反面、商品やサービスの知名度が低いと「ECサイト公開直後は集客が難しい」ことがデメリットです。
自社ECサイトで集客を軌道に乗せるには、自社の商品サービスをユーザーに認知してもらうと同時に、自社の信頼度を高めることが必要です。
そのためには、すでに自社の商品サービスを利用してもらっているお客さまの声やレビューなどを積極的に活用する施策を行うと効果的です。
自社ECサイトへの集客方法
自社ECサイトへの集客方法には、大きく分けて2つあり、広告またはSEOで集客します。
以下では、広告とSEOの両者の集客方法について説明します。
広告で集客する
自社ECサイトで売り上げを伸ばすためには、インターネット上にある膨大な数のWEBサイトの中から、自社のECサイトを顧客に見つけてもらう必要があります。
とくに、自社ECサイトの立ち上げ当初は認知度が高くなければ、集客が難しい傾向にあるため、リスティング広告を使って集客を行うと多くの人の目に触れるチャンスがあります。
リスティング広告とは、検索連動型広告ともよばれ、ユーザーが検索したキーワードに関連して、検索結果画面の上部または下部に表示される広告を指します。
広告をクリックしたユーザーを、目的のWEBサイトに誘導する集客法です。
リスティング広告については、下記の記事で詳しく説明しています。
-
参考リスティング広告とSEOの違い│検索エンジンから効果的な集客方法
続きを見る
SEOで集客する
集客のための施策として、SEO対策を施したコンテンツづくりが挙げられます。
SEO対策の目的は、ユーザーにとって有益な情報が載ったコンテンツ記事を公開し、検索エンジンからの評価を得て、サイト全体を検索結果の上位に上げることです。
SEOを意識したコンテンツ記事は、ユーザーの悩みや問題を解決するためのコラム記事、あるいは顧客教育に向けた情報記事が効果的です。
SEO対策の仕組みは、下記の記事で詳しく説明しています。
-
参考SEOとはユーザー視点のコンテンツ重視で検索エンジンから集客する施策
続きを見る
以上のように、多くのユーザーに、自社のECサイトを知ってもらうには、ペルソナや商品に合わせたマーケティングを行い、集客に注力する必要があります。
モール型ECサイトのメリット
モール型ECサイトへの出店は手軽に行えるため、多くの企業が参入しています。
モール型ECサイトは、Amazonのようなマーケットプレイス型と、楽天市場・Yahoo!ショッピングなどのテナント型にわけられます。
この章では上の図でも紹介している、モール型ECサイトを利用するメリットを詳しく解説します。
気軽にECを開始できる
モール型ECサイトには、オンライン上で商品を販売するために必要な機能がすべて揃っています。
専門的な知識がなくとも、用意されたテンプレートにしたがってECサイトがつくれます。
出店後もモール運営の担当者からサポートが受けられるため、ECビジネスが初めてでも安心です。
モールにブランド力があるため集客しやすい
日本で大きなシェアを占めているAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのモール型ECサイトは、毎月何千万人もの人がアクセスする大手サイトです。
モール自体に知名度があるため、購買意欲の高いユーザーからのアクセスは増えます。
また、定期的なキャンペーンなど、モールが顧客獲得のための活動を行うため、出店側は広告やマーケティングに費用をかけなくても、モール自体には人が集まります。
モールの信頼度が高く顧客が安心して買い物ができる
インターネットで買い物をすることが一般的になっている昨今ですが、顔が見えないという性質上、一部ではトラブルが起きているのも事実です。
そのため、インターネットで買い物をすることへの不安を払拭するために、モール型ECサイトはさまざまな取り組みを行っています。
楽天市場を例にとると、ブランドの権利者と連携した模造品対策や、ルール違反した店舗への処分などを行い、顧客が安心して買い物ができる環境をつくっています。
これらの取り組みを行っているモールに出店することで、ユーザーに対する安心感につながります。
モール型ECサイトのデメリット
出店側へのサポートが行き届いているモール型ECサイトでも、同業他者との競合やカスタマイズ性の低さなどデメリットは存在します。
出店料や販売手数料がかかる
モール型ECサイトは、実際にテナントとして出店するのと同様、大抵のモールでは出店料が必要です。
そのあとも、月額使用料や商品が売れたときは販売手数料などが必要です。
運営会社や利用プランごとに違いはありますが、固定費は大きなコストになるため、販売計画と売り上げ目標が必要です。
価格競争に巻き込まれる可能性が高くなる
モール自体の集客力が高くても、企業やお店の独自性が見えにくいモール型ECサイトでは、競合他社に打ち勝つために、価格の値下げが必要になるケースが多々あります。
ブランディングが難しいモール型ECサイトでは、価格競争に巻き込まれる可能性が高くなります。
ブランディングが難しい
ECサイトは、多くの場合運営側が用意したテンプレートにしたがって、店舗のデザインなどを決めることになります。
自由にサイトを構築することはできず、どの店舗を見てもデザインが似たようなつくりになります。
そのため、企業独自の強みやブランド性が発揮できません。
また、モール側のドメイン(URL)を使用することになるため、自社ドメインとは分けて考えなくてはなりません。
ECサイトの選び方
自社ECとモール型ECのどちらを選択した方がよいのかは、目的によって異なります。
たとえば、ブランディングも目的とするなら自社ECサイト、他社と比べて価格を強みにするならモール型ECが向いています。
以下では、両者の特徴について説明します。
ブランディングも目的とするなら自社EC
衣料品や化粧品などのデザイン性が求められる品物やニッチな商品を求めている購入者は、購入したい商品をすでに決定した状態でサイトを訪れます。
そのため、扱う企業側にも他とは異なる独自のブランド性が求められます。
商品自体にブランドが求められる場合は、ECサイトのデザインなどを自由に構築できる自社ECサイトが適しています。
他社と比べて価格を強みにするならモール型EC
日用品などの消耗品を求めている購入者は、いくつかの類似商品の見た目や機能、価格などを比較し、どれを購入するかを判断しています。
そのため、検索機能や価格の比較などができるECサイトを訪れます。
競合商品が多いなかで、低価格は他と差別化できるポイントです。
また、訪れる顧客が多いため、商品の露出も多くなり、人の目に留まりやすくなります。
自社ECサイトとモール型ECサイトの併用も効果的
商品やブランド自体が世間に知られていない段階では、自社ECサイトでの集客は困難です。
そのため、事業を始めたばかりならECモールで集客し、認知されてから自社サイトへ移行する手段も考えてみるのもひとつの方法です。
自社ECサイトとモール型ECサイトは、集客方法や運用方法などが異なるため、併用することでお互いの欠点を補完し合えます。
開発や運用には資金や人工などの企業の体力が必要になりますが、併用することで顧客からの認知度も上がるほか、リスク分散にも効果的です。
目指すECサイトのかたちを考えることから
自社ECサイトにもモール型ECサイトにも、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
サイトを作る前に、自社のサイトの運営方針を明確に決めなければなりません。
販売期間や目標とする売り上げ、商品や企業自体の認知度などで選ぶべきECサイトは異なります。
それぞれのECサイトの違いを確認した上で、最適なECサイトを構築、運用しましょう。